信託とは、ある人が(委託者)ある目的で(信託目的)、利益を受ける人(受益者)のため、信用できる人(受託者)に財産を託す制度です。古代ヨーロッパで戦場に赴く兵士(委託者)が、妻子(受益者)の生活の安定のために(信託目的)、友人(受託者)に現金や不動産(信託財産)を譲るということも、信託のルーツと言われています。わざわざ友人に託さなくても、妻が相続すれば良いのであれば信託の必要はありません。しかし、妻が一度に財産を取得した場合、「誰かに騙し取られるのではないか」「一度に使ってしまうのではないか」などの心配があります。そこで、例えば「子供が20歳になるまで、生活費として妻に毎月〇万円を渡して欲しい。残りは、妻に渡して欲しい。」と友人に託すわけです。
信託の命は、「信託目的」と「委託者、受託者、受益者の信頼関係」です。家族信託は、家族の幸せを目的とし、委託者、受託者、受益者が主に家族である信託です。家族のための家族による信託です。財産を「守る」「活かす」「承継する」を包括的に実現する機能があります。平成18年12月に信託法が大改正され、成年後見制度や遺言にはない機能を持った新しい財産管理制度として注目されています。また、財産管理等委任契約、任意後見契約、遺言、死後事務委任契約との組み合わせにより、広い範囲で活用されることが期待されています。
信託財産の特徴
信託した財産は、委託者の所有財産ではなくなります。名義も、委託者から受託者へ変わります。しかし、受託者の固有財産にはなりません。受益者は、受益権を持ちますが、信託財産は直接受益者のものにはなりません。ここから、倒産隔離機能と相続財産からの分離機能が生じます。
倒産隔離機能 | 個人事業主や会社の債務を個人保証している経営者は、事業が行き詰まった場合、個人財産を事業の債務の弁済にあてなければなりません。しかし、委託者の債権者は、委託者が倒産しても原則として信託財産を差し押さえることはできません。ただし、経営状況が良好なときに信託を設定した場合であり、悪化してからの信託設定は、詐害行為となる恐れがあります。同様に信託財産は、受託者の倒産からも守られる 仕組みになっています。なお、受益者の持つ受益権は、受益者の債権者の差し押さえの対象となります。 |
相続財産からの分離機能 | 信託財産は、相続財産となりません。 遺産分割協議の対象にもなりません。 税法上は、受益者に対する遺贈とみなされ相続税の対象となります。 また、一定の相続人に最低限の相続財産を保証する遺留分への対応には、 十分注意が必要です。 |
信託設定の方法
信託を設定するには、信託契約、遺言信託、自己信託の3つの方式があります。
信託契約 | 委託者と受託者の契約によるもの |
遺言信託 | 遺言により設定する信託。委託者の単独行為です。しかし、受託者になる人には生前に信託の内容を十分説明し、納得のうえ就任の承諾を得ておくことが大切です。 信託銀行の商品である「遺言信託」は、遺言作成の相談、遺言書の保管、遺言の執行を業務とするもので、ここでの遺言信託とは全く別のものです。 |
自己信託 | 委託者が自ら受託者として自己の財産を他人の為に管理・処分する旨の宣言をするもの。信託宣言とも呼ばれます。 |
家族信託の活用例
信託には多くのバリュエーションがありますが、代表的な活用例は、以下の通りです。
福祉型信託
(例1)妻が認知症を患っている。自分が先に亡くなった後、最も親思いの長女に妻の財産管理・生活支援を任せたい。
(例2)障がいのある長女が長く安定した生活ができるよう、アパート経営をしている。自分の判断力がなくなったときや死亡後は、甥にアパートの管理をして欲しい。甥には、アパートの建て替えなどを含め長女のために最善の運用方法を考えて欲しい。
(例3)自分の判断能力が低下した後、財産の管理・運用は長男に任せ、死後は長男に相続させたい。
注)後見制度支援信託について
法定後見制度において、被後見人の財産のうち日常生活に必要な分だけを後見人が管理し、それ以外の金銭を信託銀行に預ける制度です。信託銀行に預けた分の払い出しには家庭裁判所の指示書が必要です。後見人の不正を防止対策として導入されました。
親族が後見人で、一定額以上の財産がある場合に家庭裁判所からこの信託の利用が勧められます。家族信託とは異なる制度ですのでご注意ください。
家産承継・事業承継型信託
(例1)後妻がおり、後妻との間には子がなく、先妻との子が一人いる。後妻の生活安定のため、自身の死後自宅は後妻に住まわせたい。しかし、後妻の死後は、後妻の法定相続人ではなく、先妻との子に土地・建物を相続させたい。
(例2)先祖代々の不動産やオーナー企業の株式を分散させずに承継したい。次の次の承継者も決めておきたい。
遺言代用型信託
(例1)遺産分割協議や遺言執行の必要がない資産承継を実現したい。
(例2)自分の生前に、家族全員で資産承継の合意をし、法的効力のある書面にしておきたい。
死後事務委任型信託
(例1)自分の葬儀や埋葬などが、希望通り確実に行われる契約にしたい。
(例2)自分の死後、ペットの世話をお願いしたい。ただし、約束通り実行されたことを第三者が確認の上報酬を支払うことにしたい。
家族信託の税制
家族信託のスキームは、柔軟に設計できる反面、課税関係は複雑になります。基本的に家族信託だから税金が優遇されることはありません。いつ、誰に、何について、どの位の税率で課税されるか、税理士のチェックが欠かせません。
いきいき終活テラスでは
財産管理等委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約、遺言と家族信託を組み合わせたスキームの設計ならびに信託契約公正証書・遺言(信託)公正証書原案作成を承ります。受託者の就任は、信託業法上の免許が必要なため、お引き受けできません。信託事務処理代行者、受益者代理人、信託監督人などへの就任は可能です。
信託契約公正証書原案作成 遺言(信託)公正証書原案作成 |
信託財産額×1%+5万円(税別) |
(注)財産管理等委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約、遺言と組み合わせる場合は、それらの契約書作成報酬は別途必要です。 (注)公証人の手数料は別途必要です。 (注)不動産の信託登記のための司法書士報酬は別途必要です。 |
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信託事務処理代行者、受益者代理人、信託監督人などへの就任 | 内容により別途お見積りいたします。 |