医療同意
医師が、本人の同意なく手術や危険を伴う検査を行うことは、緊急の場合を除き、原則として違法行為になります。したがって、医師は、本人の同意を求めます。医師の説明を理解したうえで、同意するか否かの決定ができるのは、本人だけです。その時本人に同意する能力がない場合、成年後見人が、本人にかわって同意する権限はありません。後見人は、法律行為を代理できますが、医療同意は法律行為ではないからです。家族はどうかというと、「本人の意思を推測できる」「本人の最善の利益を図れる」という推定が働く場合、家族による同意も許されると解釈されています。身寄りがない場合、入院時の身元保証人が同意する場合もあります。同意するか否か、家族や身元保証人にとって、大きな決断です。
「リスクが大きくても治る可能性の高い治療をして欲しい」「体の負担が少ない方法にして欲しい」「副作用で苦しみたくない」「長期の治療や通院の必要がないようにして欲しい」など基本的な考え方を家族や身元保証人へ伝えておくと、万が一の時大きな判断根拠となります。
延命医療、尊厳死
回復の見込みがない中で、人口呼吸器、経鼻栄養チューブや胃ろうなどによって余命を延ばす医療が延命医療です。この死期を単に引き延ばす延命医療を断り、自然の経過のまま受け入れる死が、尊厳死と言われます。自然死、平穏死とも重なる考え方です。
内閣府の「平成24年高齢者の健康に関する意識調査」では、55歳以上の調査対象者全体うち「延命を目的とした延命医療を行わず、自然にまかせて欲しい」が、91.1%「少しでも延命できるなら、あらゆる医療をして欲しい」が5.1%という結果が出ています。尊厳死の意思表示を書面にしたものが、「尊厳死宣誓書」です。「リビングウィル」、「終末期医療における事前指示書」とも呼ばれます。
これには、法的な効力はありません。しかし、2016年の日本尊厳死協会の調査では、91%が受け入れられたとのことです。一方、以下の理由などからこの尊厳死、尊厳死宣誓書に疑問を投げかける医師もいます。
- 終末期とはいつからか、延命医療とは具体的に何を指すか、あいまい。
- 病状や治療方法を十分理解していない可能性がある。
- 本人の考えが変わることがある。
- 家族に迷惑をかけたくないとの思いから、他の選択を考えられなくなっているのではないか。
上記の指摘は、「延命医療を受ける状態で生きる意味や目的を感じられない」「その状態で一日でも長く生きたいと願うことは、家族の迷惑になる」と多くの人が考える中、「本当にそうだろうか」という問いかけであると思います。
最近は、本人、家族および医療従事者が、終末期の医療やケアに関し、繰り返し話し合うアドバンス・ケア・プランニング(ACP)というアプローチが注目されています。本人の、一時点での決定だけではなく、意思決定のプロセスを共有しようという考え方です。本人の意思を深く理解し、尊重するための手法です。
終末期の医療について、医師には医師の立場、職業倫理があり、家族には家族の思いや葛藤があります。「本人にとっての最善は何か」が判断のよりどころです。よく話し合って決定することが、望ましいと言えます。
在宅医療・在宅看取り
死期が近づいたら病院ではなく住み慣れた自宅で過ごし最後を迎えたいと考える方は多いと思います。しかし、病院側は、自宅で家族によるケアが可能で、往診してくれる医師が決まっているなど、受け入れ体制が整っていなければ簡単には退院を認めないでしょう。在宅医療、在宅看取りは、家族の負担が大きいだけに、医療体制同様、看護、介護の面でも家族を支える体制を早い段階から検討しておかなければなりません。家族の事情により、希望をかなえられない場合も多いです。「病院で、あたたかい終末期」を送ることができないか、検討します。
臓器提供
臓器提供に関する意思表示は、以下の3種類です。
- 脳死および心臓が停止した死後のいずれの場合も移植のために臓器を提供する。
- 心臓が停止した死後に限り、移植のために臓器を提供する。
- 臓器を提供しない。
移植を受けたい親族がいる場合、親族への提供を優先するよう希望することができます。臓器を提供するには、家族の同意が必要です。脳死状態での臓器提供は、本人の生前の意思表示がなくても家族の同意があれば可能です。
臓器提供をしないという意思表示を家族がくつがえすことはできません。意思表示は、専用の「意思表示カード」「運転免許証」「健康保険証」「個人番号カード」に署名する方法で行います。
献体登録
献体は、大学の医学部や歯学部での解剖実習に役立ててもらうことが目的です。
外科医など臨床医の訓練に活用されることもあります。
献体は、臓器移植と相いれないところがあるので、献体と臓器移植の両方を希望する場合は、献体登録したい大学へ確認が必要です。
献体登録には、家族の同意や、年齢などの条件があります。献体した場合、火葬は大学側が行います。遺骨は2、3年後に遺族へ戻ります。遺骨の引き取り手がない場合、大学が供養を行います。そのため、本来の目的から離れ、火葬、供養を目的に献体を希望する人が増えていると言われています。現在、献体登録数が需要を大幅に上回っており、新規登録を中止している大学も少なくありません。
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